第十二回社会創造数学セミナーについてのお知らせ

第十二回社会創造数学セミナーについて

下記のようにお知らせ致します.

講演者:田中宗 早稲田大学高等研究所准教授、JSTさきがけ研究者
http://www.shutanaka.com/
講演題目:量子アニーリングの基礎と研究最前線
場所:北海道大学電子科学研究所 北キャンパス1階会議室
http://www.es.hokudai.ac.jp/about/
日時:7月10日 (月) 13:00~14:00 講演会
14:00~16:00 勉強会

講演概要:
量子アニーリングと呼ばれる新しい量子情報処理技術が注目を集めている[1,2]。量子アニーリングが対象とする問題は組合せ最適化問題と呼ばれる「膨大な選択肢からベストな選択肢を探索する」という問題である。組合せ最適化問題は、集積回路の最適デザインや宅配業者の最適配送ルート、膨大な工程が存在するプラントにおける最適計画などが挙げられる。最小のコスト、もしくは最大の利益を探索することから、多種多様な産業界におけるニーズが存在する。また学術研究に目を転じても、自然科学、社会科学、人文科学といった多様な学問領域において、組合せ最適化問題が内在する。そのため組合せ最適化処理を高速かつ高精度に実行する、新しい情報処理技術の開発が求められている。こうした背景の中、物理学の概念を用いた情報科学へのアプローチが注目を集めている。組合せ最適化問題を磁性体の基本的な模型(イジング模型)にマップし、組合せ最適化問題の最適解と、イジング模型の基底状態を対応させる。それにより、組合せ最適化問題は相互作用のある多体系の基底状態を求める問題になり、物理学で培われてきた技術を用いることができる。最も有名なものとして、シミュレーテッドアニーリングと呼ばれる方法がある[3]。これは、温度(熱ゆらぎ)を表現するパラメータを導入し、これを徐々に弱めていくことにより基底状態を自然に得る方法である。自然界には熱ゆらぎの他、もう一つ重要なゆらぎとして、量子ゆらぎが存在する。量子ゆらぎを導入し、これを徐々に弱めていくことにより、基底状態を探索する。これが量子アニーリングの基本的な思想である[4]。1998年に日本で理論的提案がなされた後、わずか10年程度で、商用の量子アニーリング専用機がカナダのベンチャー企業D-Wave Systems社により開発された。この量子アニーリング専用機開発において、日本の超伝導エレクトロニクス技術が重要な役割を果たしている[5,6]。ある特定の組合せ最適化問題について、この量子アニーリング専用機を用いた場合、古典計算機を用いた場合に比べ1億倍の計算速度向上が報告されている[7]。更にごく最近、膨大なデータを有する複数の巨大企業が、量子アニーリングを用いた実活用を本格化すると発表しており、ハードウェア開発だけでなく、アプリケーション開拓という側面からも、ひときわ注目を集めている。以上を踏まえ、本講演では、初歩的な部分から丁寧に量子アニーリングの原理を説明する。特に、組合せ最適化問題をどのようにマッピングするか、について詳細に解説する。また、量子アニーリングの現在の研究開発状況、さらに、量子アニーリングが拓く未来について私見を交えながら紹介する。また時間の余裕があれば、私自身が共同研究者とともに現在進めている、量子アニーリングや周辺技術に関する各種研究やその他の活動についても述べる[8-15]。
References:
[1] 西森秀稔、大関真之、『量子コンピュータが人工知能を加速する』、日経BP (2016).
[2] S. Tanaka, R. Tamura, and B. K. Chakrabarti, “Quantum Spin Glasses, Annealing, and Computation”, Cambridge University Press (2017).
[3] S. Kirkpatrick, C. D. Gelatt, M. P. Vecchi, Science, 220, 671 (1983).
[4] T. Kadowaki and H. Nishimori, Phys. Rev. E, 58, 5355 (1998).
[5] M. Hosoya, W. Hioe, J. Casas, R. Kamikawai, Y. Harada, Y. Wada, H. Nakane, R. Suda, and E. Goto, Applied Superconductivity, IEEE Transactions, 1, 77 (1991).
[6] Y. Nakamura, Y. A. Pashkin, J. S. Tsai, Nature, 398, 786 (1999).
[7] V. S. Denchev, S. Boixo, S. V. Isakov, N. Ding, R. Babbush, V. Smelyanskiy, J. Martinis, H. Neven, Phys. Rev. X, 6, 031015 (2016).
[8] I. Sato, K. Kurihara, S. Tanaka, H. Nakagawa, and S. Miyashita, Proceedings of the 25th Conference on Uncertainty in ArtificialIntelligence (UAI2009).
[9] I. Sato, S. Tanaka, K. Kurihara, S. Miyashita, and H. Nakagawa, Neurocomputing, 121, 523 (2013).
[10] http://www.shutanaka.com/papers_files/ShuTanaka_DEXSMI_10.pdf
[11] 次のサイトの slideshare に幾つかのプレゼンテーション形式ファイルを掲載しています: http://www.shutanaka.com/study.html
[12] http://www.waseda.jp/top/news/35050
[13] https://www.waseda.jp/top/news/46400
[14] http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100602.html
[15] 科学研究費補助金基盤研究(B)「量子アニーリングが拓く機械学習と計算技術の新時代」(代表:大関真之) Webサイト:http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~mohzeki/QL/index.html