第十回社会創造数学セミナーについて

第十回社会創造数学セミナーについて

下記のようにお知らせ致します.

日時:5月19日(金)10:00~12:00
場所:電子科学研究所大会議室(北20条キャンパス)
講演者:小田口浩 (北里大学 東洋医学総合研究所 所長)
講演タイトル:漢方医学診断ロジックの形式知化-西洋医学と対比した漢方医学の特徴を踏まえて-
要旨:
仮説に基づく基礎研究をもとに治療法を開発し、臨床研究を経て臨床応用が図られる西洋医療と異なり、漢方医療においては、試行錯誤の人体実験で観察された事象が整理、集積されて知恵の形で具現化し、医療者はそれを眼前の患者に応用すると同時に、その試行結果が新たな知恵の源となっていくという特徴がある。この知恵は、医療者(主として漢方医)の五感を通じて得られた患者に関する情報を、寒熱、虚実、気血水といった漢方医学独自の理論も考慮しながら類型化し、最終的に当該患者に適合する漢方方剤(いくつかの生薬の組み合わせで構成される)を決定することを可能とする知恵である。つまり漢方医療における診断は、西洋医療のように「糖尿病」、「椎間板ヘルニア」といった形で下されるわけではなく、上記知恵を基に最終的に「葛根湯(かっこんとう)」、「小柴胡湯(しょうさいことう)」といったような、漢方方剤の名称という形で下されるのである。この知恵はその性質上、説明記述が困難な暗黙知が占める割合が多く、知恵の内容は漢方医によって多少の相違があることが一般的で、それは伝統医療に内在する当然の制約であると考えられてきた。今回の我々のプロジェクトでは、暗黙知とされる部分の骨格を形式知化し、漢方医療の診断方法をある程度標準化しようとしている。具体的には、患者の所見とそれに対して処方された漢方方剤、そしてその効果を1データとし、それを前向きに集積することで先人が築いてきた知恵の骨格部分を形式知化することを目指している。本発表ではその計画を供覧し、課題と今後の方向性についてご意見を伺いたい。